過剰請求と国防

ヤマトホールディングスの子会社のヤマトホームコンビニエンスが、法人客に対して過剰請求をしていたことが発覚し、厳しい批判に晒されています。実際に運んだ荷物の量は、過剰に見積もっていた見積もり金額よりはかなり少なかったにもかかわらず、見積り金額のままで請求していたという。通常は、見積り以上の請求がなされた場合にトラブルが発生するものですが、見積り通りの金額で過剰請求になるというのは余り例がないのではないでしょうか。よほど過剰な見積りをしたのだと思われますが、過剰請求の総額は17億円に上るという。

過剰請求は意図的になされた場合は、詐欺にも相当するような犯罪だと思われますが、実は米国製の軍需品の取引では、米国が定めた有償軍事援助(FMS)という制度によって、過剰請求が大前提になっています。それどころか、日本政府は過剰請求を承知の上で、過剰請求金額を納品前の発注時に前払いするという、ヤマトも真っ青になりそうなほどの超異例の仕組みになっています。この契約に従わなければ、アメリカから軍需品を購入することはできないわけですが、軍需品という特殊な商品ゆえ、通常の取引の枠外の条件が課されることはやむをえないとしても、納品時、あるいは納品後には、過剰に前払いした金額の精算がなされるべきであることは、当然すぎるほど当然です。しかしアメリカ側はなかなか精算に応じようとせず、2017年末で1000億円も未精算のままだという。有償軍事援助、未精算1000億円超

トランプ大統領は、この未精算分を放置したまま、安倍総理にもっともっと米国製武器を買うように要求していました。北朝鮮の暴発の危険性もあり、安倍総理もトランプ大統領の要求に応じて、巨額の予算を投じてイージス・アショアやオスプレイなどの購入を決めています。(参照:防衛費って何?アメリカから兵器を買い続ける理由「4881億円」の内訳

国の安全や独立を守るためには、周辺国の軍事的脅威に対抗しうる軍備は必要不可欠ですが、日本の場合、安全保障はアメリカに依存せざるをえないという、特殊な事情を抱えています。トランプ大統領になってからは様子が変わってきたとはいえ、EUなどもアメリカの軍事力に依存しながら域内の安全保障体制を維持してきました。しかしEUの場合は日本とは異なり、アメリカとの関係はあくまでも対等な同盟関係を維持してきました。しかし日本の場合は、アメリカとは今なお従属関係に置かれています。

それを象徴するのが日米安保条約に付帯して作られた、在日米軍基地や米兵などの権利、権限などを定めた日米地位協定です。日米地位協定は日米の従属関係を明確化した法律ですが、その不平等さには、ついに46都道府県の全国知事会までもが抜本改革を要請するほどです。(全国知事会が日米地位協定の抜本的改定を提言

この全国知事会の提言は、先ごろ急逝された沖縄県の翁長知事の遺志を継いだものだとのことですが、多発する米軍の事故や事件を受け、沖縄だけの問題ではなく、日本の危機そのものだとの思いが、全国知事会の提言になったものだと思われます。しかも2008年には、条文化された日米地位協定を、さらに米国優位な内容に改変するための密約まで交わされていたことが、秘密解除された文書によって明らかになったという。日米地位協定3条1項、日本の法律より米国の都合を優先

 

米軍基地の被害が集中している沖縄県は、日米地位協定がいかに不平等なものであるかを、ドイツやイタリアで現地調査を実施し、その中間報告書(他国地位協定調査書)をまとめ、6月12日付けで県のHPに公開しています。日米地位協定の改定にかける翁長知事の強い思いが貴重な遺産として残されたことになりますが、不平等ではないとの宣伝に力を入れてきた日本政府にとっては、都合の悪い結果になっています。ただ、上記報告書は非常に詳細で長文ですので、報告書の要旨は下記の記事をご参照ください。

日米地位協定 動かぬ改定 独伊は事故を機に見直し ⇒「イタリアのディーニ元首相は、沖縄県の調査にこう話したという。『米国の言うことを聞いているお友達は日本だけだ。沖縄が抱える問題は、日本の政治家が動かないと解決が難しい』」

 

米軍は繰り返し事故を起こし、その都度日本政府からは自粛を要請されるものの、日本政府による正式の自粛要請ですら完全に無視してすぐさま飛行や訓練を再開、を平然と繰り返しています。基地外で事故を起こしても、日本の捜査当局は傍にも近寄れない。日米地位協定の内容を知らなくとも、日本を完全になめ切っている米軍の姿は繰り返し我々は目にさせられ、対米関係では日本に主権のないことを目の当たりにしてきました。なぜここまで屈辱的な関係を甘受しなければならないなのか。しかし問題は、日米地位協定にとどまらないということです。

総理大臣も他の政治家もその実態を把握できない、毎月2回開催される日米合同委員会という秘密会議によって、日本の政治の実質が決定されているということです。(憲法よりも国会よりも強い、日米「秘密会議」の危ない実態) 鳩山元総理もこの日米合同委員会の危険性を訴えていますが、驚くべきことには、在任中は、こんな会議が開催されていたことすら知らなかったという。(矢部宏治が鳩山友紀夫と“日本の真の支配者”を語った!)

親米色のきわめて強い安倍総理は、当然のことながら“日本の真の支配者”を知っているはずですし、その意向を十分に汲んだ上で政策を実行しているはずです。ただ、安倍総理はイメージほどには対米従属度は強くはないとの指摘もあります。石破氏の「安倍総理はトランプとの友情を優先」が見当違いな理由 これは北野幸伯氏の記事ですが、安倍総理は確かに、親米路線を堅持しながらも独自政策も進めています。

 

しかし、島を守るために知恵を絞る台湾、何もしない日本 にあるような、憲法の制約がある中でも知恵を絞って、独力で日本を守ろうという気概までは持っていないのではないか。これは安倍政権だけではなく、歴代政権に共通した姿勢ですが、憲法9条、日米地位協定と付随した日米合同委員会があるかぎり、誰が総理になっても、同じだろうと思います。

 

自民党の中では野党色が強く、安倍総理に対しても批判的であった河野太郎氏は、かつては日米合同委員会の透明化を主張していたそうですが、外務大臣に就任して以降はこの主張は完全に封印されているという。朝のRKBラジオで布施祐仁氏が語っていた河野大臣の「現在」ですが、外相としての職務に忠実故なのか、大臣に就任して知った、陰から発せられるアメリカの圧力の強さにひるんだ結果なのか、気になるところです。

 

モリカケ問題では野党もマスコミも政府や省庁による情報隠蔽を厳しく批判してきましたが、日本の主権を完全に蹂躙している日米合同委員会の議事録に関しては、どこも公開を求めようとすらしていません。公開されずに完全に秘密裡になされていることには、野党もマスコミも沈黙しています。公文書の公開を求めるNPO法人が議事録の公開を求めたそうですが、拒否されたという。わたしはネットで知ったのですが、マスコミはこうした事実すら報道していません。マスコミが報道すれば国民も黙ってはいないはずですし、公開を求める国民の声が高まれば、日本政府も米軍や米政府に対して公開を要請せざるを得なくなるはずですので、隠蔽を続けるマスコミの責任は重大です。

 

在日米軍といえば沖縄の問題に矮小化されがちですが、莫大な額の駐留経費を日本政府に負担させていながら、日本に対する敬意のひとかけらもない、占領軍然としたその姿を改めて振り返ってみると、米軍が日本の国土と日本国民の安全を守るために日本に駐留しているとは思えなくなってきます。

 

軍備の増強は、自国の独立、自国民の安全を守るためになされるべきであるのは言うまでもないことですが、日本では国防の核に鎮座する米軍には、この基本の基本の認識が皆無に近い。この米軍に対して、抗議一つできない日本政府に対しても同様の疑念を感じます。

 

7月30日、諫早干拓地を巡る裁判で、福岡高裁は国の主張を認め、漁業者側に逆転敗訴となる判決を出しました。それから間もなく佐賀県の山口知事は非公式ながら有明空港へのオスプレイの受け入れを表明。その後間もなく小野寺防衛大臣が佐賀県を訪問し、改めてオスプレイの受け入れを要請したのを受けて、知事は正式にオスプレイの受け入れと、国が設置する100億円基金を使って、有明海の再生に取り組むことも表明し、漁業者側の協力を求めていました。

 

この一連の流れを見ていると、漁業者側の敗訴とオスプレイ受け入れとは、一体のものとして政府と裁判所との間では、暗黙の了解があったのではないかとさえ思えてきます。諫早干拓の農地使用には調整池の浄化のためには、農地利用が続く限り未来永劫に税金が投入され続けます。さらに干拓地の泥濘化を防ぐためにも、未来永劫税金が投入されつづけます。これほど理不尽な農地利用があるでしょうか。しかし国も裁判所も、佐賀地裁の判決を除けば、漁業者側よりも干拓農民の主張を優先的に認めてきたわけです。有明空港の軍事利用も漁業者側の了解を得なければならないという取り決めがありますが、事実上この取り決めも無視されています。佐賀に隣接する柳川市の金子市長は、オスプレイ受け入れに際しては事前協議する取り決めがあったにもかかわらず、佐賀県が協議なしに受け入れ決定したことに怒りを表明しています。

 

反対しそうな相手は意図的に無視した可能がありますが、安倍政権は漁場を縮小してでも有明海周辺の軍事利用を拡大する方針ではないかと思われます。干拓農民たちは、漁民を有明海から追放するために利用されている側面もありそうですが、国防は何のために、誰のためにあるのか、基本の基本が問われるべき事態です。

 

日本の独立を回復させることこそが日本の国防強化への第一歩となるはずです。そのためにはまず日本政府は米国政府に対して、防衛装備品に対する過剰請求の解消を求め、米側が精算に応じないのであれば、今期購入する兵器等の代金から未精算分を差し引いて支払うことを表明すべきです。そしてすぐにも実行可能な、日米合同委員会の議事録をその都度公開することを独立国家の権限として、米軍と米国政府に求めるべきです。民主国家の基本の基本である議事録公開すら拒否されるならば、日米合同委員会そのものの開催を日本側は拒否すべきです。

 

日本の独立なしに、国防などありえません。

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