5G から都構想まで

5G から都構想まで

2019-04-14

「葦の葉ブログ2nd」より転載

まず冒頭、与野党の政治家の皆さんにお尋ねいたします。5G通信開始をめぐって、米韓がデッドヒートを展開していたニュースはご存じですか。僅かな時間差で米韓それぞれが、わが方こそ世界初と世界に向けてアピールしていますが、日本は何と、このデットヒート渦中に、総務省が通信4社に対して5G用の電波割り当てを発表しました。その翌日だったかに、電波割り当てを得た通信4社は揃って、安倍総理と並んで、基地局にファーウェイ製品を使わないという政府の方針に従うことも明らかにしました。

ファーウェイの5G技術は世界最高レベルであることは日本の専門家も認めており、5G通信ではファーウェイ製品を使わないということはありえないとまで言われていたほどですが、トランプ政権の鶴の一声で、日本やEUなどがファーウェイ排除を決定しました。ただしEUは最近になって、ファーウェイ排除を解除しています。ファーウェイ排除というトランプ大統領の要請(命令)に最も忠実に従っているのは、おそらく日本だけだろうと思われます。

実はアメリカのベライゾンと華々しくもデッドヒートを繰り広げていた韓国の5G通信技術は、95%がファーウェイ製品だということです。トランプ大統領のファーウェイ排除要請は、当然のことながら韓国にもなされましたが、韓国政府は民間企業の事業なので政府は関与しないとして、米国からの排除要請を無視したという。それどころか、米国と世界初競争でデッドヒートまで展開。文大統領は、5G通信では韓国が世界初となったと政権浮揚の効果も狙って堂々と喧伝しています。

ファーウェイも中国政府も、自ら表に顔を出せない状況なので、韓国の5Gはファーウェイ製であることは公にはせずに、名を捨て実を取ることに徹しているようです。ファーウェイはむしろ黒子に徹して、韓国を使ってファーウェイ製品の世界流通を狙っているのではないかとも思われますが、見方を変えると、トランプ大統領の圧力を受けてファーウェイは主役にはなれず、あくまでも部品提供者の地位に甘んじなければならないともいえるわけです。トランプ大統領もこの事実は知らないはずはないはずですが、韓国の対米黒字は中日EUほどではなく、また韓国はアメリカにとっては真の脅威でもないということもあり、黙認しているのでしょう。オバマ大統領時のイラン制裁でも、韓国は堂々と制裁違反をしていましたが、米国からは非難も受けていません。

米韓は5G通信市場を独占しようとデットヒートを繰り返ししているのですが、米国のベライゾンが採用しているノキアはファーウェイの子会社になっているという。子会社となれば、親のファーウェイの製品、技術を使うはずですが、ノキアを介すればOKということなのでしょうか。いずれにせよ、米韓が世界標準の独占を狙ってデッドヒートを繰り広げてはいるものの、真の主役はどちらもファーウェイ。どっちに転んでも勝者はファーウェイとなりますが、トランプ大統領はこの事実を知っているのでしょうか。

さらには安倍総理や与野党の政治家もこの事実を知っているのでしょうか。日本では、日本のマスコミ報道だけを見ていては、世界を見誤ります。韓国では、今や有線網は全てファーウェイ製だと中央日報が報じていましたが、5Gもファーウェイ製になるのは必然です。駐韓国日本大使館の職員ならば、この程度の情報はニュースとして把握しているはずですが、政府に報告しているのですか。

安倍政権はあらためてファーウェイ排除を明確にしましたが、韓国の5Gがほとんどファーウェイ製だということは知っていたのでしょうか。日本のマスコミが報道しなくても、政府としてはこの事実は把握していなければなりませんが、この事実を承知の上で、電波割り当てと引き替えに、通信4社にファーウェイ排除を承知させたのでしょうか。自前で開発できればそれに超したことはありませんが、公共の電波割り当てという通信事業では政府の関与は不可避とはいえ、通信事業を余りにも政治的に利用しすぎてはいませんか。

デッドヒートを展開した米韓企業が世界標準になるとは思えませんので、日本は焦る必要はないとは思いますが、自前の技術がなくとも世界一になる、世界標準を取ると、アメリカを出し抜こうと、堂々と米国とデッドヒートを展開する韓国政府のようなスタンスに立つべきではないですか。もっとも、もしも日本が韓国の真似をしてアメリカとガチコンになれば、アメリカ政府は日本に対しては押さえ込みにかかるでしょうから、日本企業としてはいやでも萎縮せざるをえないというのも現実かもしれません。しかしトランプ大統領は余りにも不公平ではありませんか。なぜ韓国に対しては、ファーウェイ製品使用を黙認しているのか。

さらにはまた、福島などの水産物に対する韓国の禁輸措置をめぐるWTOの最終審では、日本は逆転敗訴となりましたが、その根拠は全く不明。どの報道を見ても明確な理由はどこにも見当たりません。科学的には安全が証明されているという日本側の主張が、科学的に反論されて危険だと認定されたわけではないにもかかわらず、韓国の禁輸を妥当だと認定したことは、WTOがいかに公正さを欠いた機関であるかを証明しています。

おそらくWTO委員に対する、買収も辞さない韓国側の働きかけが判定の基準になったのでしょう。韓国は、ノーベル賞(平和賞)に対してすら現金を使った働きかけをするお国柄ですから、WTO委員の取り込みなどいとも簡単だと思われます。日本の外交能力の余りの弱さ、低さがここでも露呈したとみるべきでしょう。復興五輪もただのお題目になりかねません。韓国を見ていると、外交交渉も、武器は使わぬものの戦争そのものだと心底思い知らされますね。日本の外交には最も欠落している部分です。情報戦も武器を使わぬ戦争ですが、日本は収集、発信両面における情報戦でも、韓国に完全に負けています。外務省のお役人たちは何をしているのでしょうか。

加えて、余りにもレベルの低すぎる大臣たちの異常発言がつづいています。このままで日本は大丈夫なのかとの思いに駆られ日々ですが、かといって、外国人(韓国人)からの違法献金疑惑を追及されていたその渦中に、突然襲来した3.11巨大災害で救済された菅直人氏が、その罪不問のまま、幹事長にまでなっている立憲民主党などの野党政権はやはりご免こうむりたい。統一地方選挙では、大阪維新の会が勝利したのも、いかがわしい「都構想」支持によるものではなく、自民党の余りのひどさに、やむなく保守っぽい維新に入れたという有権者も多かったからではないかと思われます。

データをごまかす維新の会 2019-04-14

特に、前大阪市長で新府知事の吉村洋氏は、昨年、アメリカのサンフランシスコ市の市有地に、在米韓国人などが設置した従軍慰安婦像の撤去要請が受け入れられなかったことを理由に、同市との間で結んでいた姉妹都市協定を破棄したことから、維新の会は日本の国益、日本人としての誇りを断固守る政党だとの印象を振りまいたているようですが、必ずしもそうならず。韓国の統一協会は、超右翼的言動を売りにしてきましたが、彼らの真の狙いは日本社会の解体破壊です。維新の会の背後に統一教会がいるのかどうかは不明ですが、維新の会は、日本の伝統的な遺産については躊躇もなく破壊する傾向をもっていることは明白です。都構想はその思想の具現化の一つです。

民間委託している大阪城に関する展示で、およそ日本の城ではありえない、どこの国の城なのかと思われるような展示がなされていたのをネットで発見し、驚愕! 驚きの余りすぐに画像を保存するのを忘れてしまって、あとでその画像を再検索しましたが、どこかに消えて見つかりませんでした。文楽への補助金廃止(批判を受けて撤回されたはずですが)など、維新の会は対外的に示す超保守的なパフォーマンスとは裏腹な、日本文化、日本社会に対する破壊衝動を持っているように思われます。

ただ福岡にいて、西日本新聞という地域紙を読んでいると維新の会の動きは皆目伝わってきません。ネットにはきちんとした批判論評も出ていましたので、少し安心しました。関西圏の大学の教授たちが繰り返しシンポジウムなどを開いて、大阪都構想の危険性について有権者に訴えていますが、一般マスコミではほとんど報道されていないのではないか。批判者のお一人である京大大学院の藤井聡教授は、大阪都構想の危険性について、「大阪都構想:知っていてほしい7つの事実」と、非常に簡潔にまとめられています。最大のポイントは、大阪都構想は、大阪市を単に5分割解体するだけで、東京都のような「都」になるわけではないばかりか、現在2200億円もある大阪市の税収が全て大阪府の税収になり、政令指定都市として大阪市が有する、強力な政策決定権も放棄することになるということです。当然、巨額の税収に支えられてこれまで実行してきたような政策実行能力もなくなります。

そもそも大阪市を5分割解体して、関西圏における大阪市の吸引力を弱体化させることが、なぜ大阪圏にとってプラスになるのか全く理解不能ですし、それがなぜ二重行政の解消になるのかはさらに理解不能。本気で二重行政を解消する気があるなら、行政区分を変えず、現行制度のままでもいくらでも可能なのではないか。例えば、道路管理は、該当予算も含めて全て府に移管するとか、あるいは教育行政は予算も含めて完全に大阪市に移管するとか、医療福祉関係もどちらかに完全移管するとか、他府県や他市町村とは異なり、府市一体化している大阪ではいくらでも方法は考えられるはず。しかも大阪市は、江戸時代から世界に冠たる商都として栄えてきた先進都市の一つでしたが、その大阪市の解体は単に大阪市の歴史の解体のみならず、日本の歴史の解体にほかなりません。

維新の会は、東京一極集中を阻止し、同時に災害時のバックアップ用に、大阪を副首都にすることも大阪都構想の目的に掲げていましたが、昨今の異常災害頻発下では大阪も完璧なバックアップとはなりえませんので、こちらの理由は消滅。しかも首都機能の一部移転は、まさに国レベルでの二重行政そのものにほかなりません。維新の論理に自ら反する政策となるわけですが、彼らはこの矛盾は無視しているらしい。東京一極集中を阻止するためには、かつての商都のように、核となるような強力な産業の育成が不可欠ですが、維新発足後11年もの長きに渡って維新が大阪市と府を独占してきたものの、これといった産業は育っていません。

製造業の海外移転が進む中、日本全体が同様の問題を抱えているとはいえ、維新の会は、彼らの無策を、都構想を賑々しく喧伝し、都構想が実現すれば大阪の経済は活性化すると根拠なき幻想を振りまくことでごまかし続けてきました。この11年間で維新の会が打ち出した最大の経済浮揚策はIR誘致と大阪万博ぐらい。大阪府市民の日常的な暮らしの向上には全く役には立たない経済政策です。

しかし維新の会は、彼らの治世によって大阪の経済は大いに成長したと、全国平均をはるかに上回り、関西圏でも最高の成長率を示す景気動向指数のデータ入りで喧伝しているそうですが、実はこのデータにもウソ偽りがあることを、藤井教授は次のように指摘しています。「統計のウソ」に騙されるな ~「維新政治10年で大阪は良くなった」説の検証結果報告 ~

そのポイントは、大阪の実質成長率は京都府、兵庫県よりもはるかに低く、関西圏では最低であったということがまず一点。維新政治では徹底した緊縮財政策が採られたので、実質成長率が低くなるのは、ギリシャ危機の例をみても当然すぎる結果です。高槻市の小学校のブロック塀が、危険だとの専門家の指摘を受けながらも放置されたのも、その緊縮財政の結果によるものであったことは言うまでもありません。(参照:河田京大名誉教授がとりまとめた「防災における維新による悪政リスト」

にもかかわらず、景気動向指数ではなぜ大阪は関西一、全国一のような数字が示されているのか。一つには、関西圏は京都や奈良という、国内でも超人気かつ外国人好みでもある古都を擁するがゆえに、全国一のインバウンドの増加があり、関西圏唯一の国際空港のある大阪にもインバウンド増加の効果が及んだということで、維新の会の政策とは全く無縁の棚ぼた式効果によるものでした。

しかもあきれ果てたことには、景気動向指数に使われた大阪のデータには、他府県とは違った高成長を示すデータが使われているという。他府県は消費動向指数を示すデータとして、一般的な商業販売額を使っていますが、大阪だけは百貨店の販売額だけを使っているという。百貨店も不景気になると売上が下がるでしょうが、客層が異なり、スーパーなどの一般商店の方が不景気の影響をより強く受けます。さらに他府県のデータには採用されている、不景気の影響を即受ける耐久消費財も、大阪のデータから排除されているという。つまり大阪は、不景気の影響をもろに受けやすいデータを排除するという、データ操作をしていたということです。こういう操作をして、彼らの府政、市政の正当性を喧伝していたわけです。

橋下・松井府政:知ってほしい7つの「検証」

のみならず維新の会は、前回の都構想の賛否を問う住民投票時のことですが、厳しい維新批判を展開する藤井教授の口を封じるために、藤井論文を国会で取り上げ、大臣や役人を使って藤井教授の維新批判がいかにデタラメかを言わせようとしたという。しかし維新の足立議員の思惑に反し、大臣やお役人からは「そうした問題は言論の場で論議すべきだと思う」とのしごくまっとうな答しか引き出せなかったという。おそらく維新の会が絶対的な権力を握ると(都構想が実現して、今の大阪が解体されてしまうと)、学者や研究者、大学なども彼らの思いのままに選別されることになるはずです。維新・足立康史議員が、「大阪都構想」を批判する「現代ビジネス・藤井原稿」を国会で追及~~政治圧力と学問の自由について

藤井 聡「大阪都構想」を考える〜適正な有権者判断に資するために〜

マスコミでは維新のマイナスになるような報道はほとんど皆無に近いので、あえて前回の統一地方選挙の総括として取り上げました。大阪府市の選挙では、全政党が反維新で選挙戦に臨んだものの、きちんとデータを示し、理論的に維新の危険性を有権者に訴えたのかどうか、福岡にいては全く状況は分かりませんが、維新の勝ちっぷりからすると、情緒的な維新批判しかできていないのではないかとも推測されますので、あえて福岡から批判を送らせていただきます。

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