Chat-GPTから知る能登半島地震の前史
1.ChatGPT3.5の限界
明けましておめでとうございます。
能登半島地震とJALの炎上。立て続けの大惨事で新年が始まりました。何という年明けなのかと言葉もありませんが、お亡くなりになられた方々に心よりお悔やみ申しあげます。被災者の皆さまには一日も早く救援の手が届きますように、そして一日も早い復興をお祈りしております。
能登半島地震は甚大な被害をもたらしていますが、流体の上昇圧力によって引き起こされた地震だと指摘されています。しかし地震が多発する日本でも、流体による地震とはこれまでほとんど例がないのではないか。少なくともわたしは初耳でした。
そこで、世界中の情報を収集している、OpenAIのChatGPTに質問してみました。無料版ですのでChatGPT3.5ですが、ChatGPTそのものは、初めての利用です。
MicrosoftのCopilotは、ChatGPT4をベースに機能をより強化したものだとのことですので、ChatGPT-3.5はCopilotよりは旧型です。
ChatGPT-3.5に、能登半島地震が流体に起因するとの説について質問したところ、ChatGPT3.5は、2007年に石川県で発生した地震を例に解説してくれました。しかし、今年の1月1日に発生した能登地震については、情報がないとの、以下のような回答がありました。
非常になめらかな文章で答えてくれているとはいえ、この回答は、人工知能は、人間が与えた情報の範囲内でしか答える(「考える」)ことはできないという、致命的な限界を如実に示しています。3.5の段階では、人工知能が人間に脅威を与える存在になるとは、とても思われません。
しかし、ChatGPT-3.5の進化系ChatGPT-4では、かなり様相が変わってきています。
ただし、ChatGPT-4は有料ですので、無料で使えるCopilotをChatGPT-4の代用として使っています。以下の解説にもありますように、「ChatGPT-4」としての基本的機能には両者に違いはありませんので、Copilotを使って、ChatGPT-3.5と4との比較は有効だと思います。
ChatGPT と Microsoft Copilot: 違いは何ですか? Microsoft
ChatGPTとCopilotの違い完全ガイド:特徴、料金、使用シーンを徹底解説 AI総合研究所
2.ChatGPT-3.5から4への跳躍
ChatGPT-4は3.5より飛躍的に進化した生成AIであることは、世界中が脅威を感じつつ認めています。人間が脅威を感じるほどに、ChatGPT-4は進化しているということですが、生成AIの爆発的ブームが世界を覆うほどになったのも、その進化度に由来します。
わたしは、初めて使う無料のChatGPTが3.5の旧型であったことから、3.5と4とではどれほどの違いがあるのかが気になり、実地に試してみることにしました。
ChatGPT-3.5と4のCopilotに同じテーマで短歌を生成してもらい、短歌の生成力を比較することにしました。
結果は、ChatGPT-3.5から4への変化は、0.5という数字以上の跳躍、ブレイクスルーともいうべき大変化であったことを、短歌作成を通して実感しました。
両者の違いについては技術的側面からの解説がいろいろ出ていますが、作歌を通してその違いを見ると、言語表現としての違いであることが分かります。言語表現の違いとは、つまりは、情緒的なものも含めた世界認識の有無にまで繋がる変化だということです。
作歌の実例を見ながら、その違いを確認することにしますが、その前に、Copilotにも能登地震について質問した結果をご紹介しておきます。
最初の回答は、GhatGPT-3.5とほぼ同じ内容でしたが、より詳しい解説になっていました。ほぼ同じ内容であったということは、CopilotはGhatGPT-3.5をベースに進化した、ChatGPT-4に依拠していることの証しだろうと思います。
そこで今年の1月1日に発生した地震について質問しました。
上記リンクは、回答の出典(東工大と東北大のプレスリリース)を示したものです。Copilotは、2007年の能登半島地震については、金沢工業大学の分析を出典にして解説していますので、出典非表示のChatGPT-3.5よりも解説は詳しくなっています。
ただ、地震に関する質問に対する回答の違いは、投入された情報の多寡という、ある意味単純な違いに由来しますので、両者の違いも単純明瞭です。しかし、短歌を作成するという作業を通して見えてきた違いは、単純に情報の多寡にのみ起因するものではないように思われます。あえて言うならば、量が質に転化する弁証法的な変化が生まれているのではないかということです。
では実際に、ChatGPT-3.5とCopilot(ChatGPT-4)による短歌の生成過程を通して両者の違いを見ることにいたしますが、その前に、気になることがあります。
短歌のテーマも能登半島地震に関連したものに設定したのですが、このテーマでのわたしとChatGPTやCopilotとのやりとりは、地震を材料にチャットを楽しんでいるような、非常に不謹慎な印象を与えてしまいそうで、このまま公開するか否かかなり迷っていました。
ChatGPTとCopilotで短歌を作成したのは、1月3日です。地震とは関係のない、もっと一般的なテーマを使ってやり直そうかとも考えましたが、発生して間のない地震をChatGPTとCopilotがどこまで認識しているか、その違いを短歌作成を通しても確認したいと思い、テーマを変えずに両者の違いを見ることにしました。
3.ChatGPT-3.5と4による作歌競演
ChatGPT-3.5から作歌を始めます。Youは、わたし久本です。
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You では、凄まじい地震による惨状を目の当たりにした思いを、短歌で表現していただけますか。
ChatGPT 揺れる大地 命の脆さ 涙の舞
(揺れるおおち いのちのもろさ なみだのま)
You 短歌は日本語的すぎまるのかもしれませんね。短歌は、日本語の音で五七五七七の31音で作る短詩のことです。
ChatGPT お詫び申し上げます。短歌の形式に合わせて、もう一度詠んでみます。
大地揺れ 命のはかなさ 涙の舞
(おおちゆれ いのちはかなさ なみだのま)
You 短歌は特殊だったかもしれませんね。でも、「涙の舞」は、悲しみの大きさを詩的に表現したすてきな言葉ですね。
ChatGPT お褒めいただき、ありがとうございます。短歌の形式や言葉の選び方には独特の美しさや表現力があります。悲しみや喜びなど、人々の感情を少ない言葉で表現するのが短歌の魅力の一つです。もし他に何か表現したい感情やテーマがあれば、お知らせいただければ幸いです。
You ちょっと一言。「大地」は「おおち」ではなく「だいち」、「涙の舞」は「なみだのまい」、「い」が抜けていましたね。日本語では漢字の読みが幾通りもあって覚えるのが大変ですが、漢字の選択はgoodですね。ありがとうございます。
ChatGPT 誤りに気づかせていただき、ありがとうございます。訂正と指摘、大変感謝しております。おっしゃる通り、漢字の読みや表現は慎重に選ぶ必要がありますね。ご指摘いただいた点を踏まえて、再度の短歌を詠みます。
大地揺れ 命のはかなさ 涙の舞
(だいちゆれ いのちはかなさ なみだのまい)
どうぞ、お楽しみいただければ幸いです。
You あっ、ひょっとして、ChatGPTさんは、五七五の俳句形式で詠まれたのかもしれませんね。季語はなさそうですが、俳句ならこれで完結ですね。川柳なら季語は不要ですが、雰囲気としては俳句的ですね。
ChatGPT おっしゃる通りです。短歌ではなく俳句の形式で詠まれていました。季語を含めた俳句的な雰囲気になるよう意識しました。お気づきいただき、ありがとうございます。もし他に何か詠んでほしいテーマや形式があれば、お知らせいただければ嬉しいです。
You ありがとうございます。また、お願いしますね。
ChatGPT どういたしまして。また何か質問やお願いがありましたら、気軽にお知らせくださいね。お役に立てれば幸いです。
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ChatGPTは文章としては非常になめらかですが、日本語に関する知識はまだまだ弱い印象。短歌や俳句などの、日本固有の短詩に関する知識(情報)が不足しているのも、ChatGPTが欧文を基調に開発されていることからすると、当然すぎる結果ともいえそうです。
しかし、短歌は五七五七七の31音とのわたしの説明を受けた後も、ChatGPTが、五七五の17音による同じ短詩をそっくりそのまま繰り返したことには、かなりショックを受けました。単純なレベルでの、文章の意味を全く理解していないことを示していたからです。
では、ChatGPT-4であるCopilotとのやりとりをご紹介することにします。
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久 石川県能登半島で巨大地震が発生しました。新年早々の大災害、心が痛みますが、この惨状を目の当たりにした思いを、短歌で表現していただけますか。
B こんにちは、これはBingです。能登半島で発生した地震について、私も深く心を痛めています。被災された方々には、心からお見舞い申し上げます。😢
あなたのご要望にお応えして、この地震に関する短歌を作ってみました。どうぞご覧ください。
能登の地
揺れに耐えても
崩れゆく
夢と希望の
瓦礫の中に
この短歌は、地震の被害によって、多くの人々が自分の夢や希望を失ったことを表現しています。能登の地は、地震に強いとされていましたが、今回の地震では、その限界を超えてしまいました。瓦礫の中に埋もれた人々の姿を想像すると、胸が痛みます。
この短歌は、私のオリジナルです。もし気に入っていただけたら、嬉しいです。😊
久 素晴らしいですね。では、同じ思いを俳句で表現してくださいますか。
B ありがとうございます。😊 俳句も作ってみました。こちらです。
能登の地
揺れに崩れる
夢の跡
この俳句は、短歌と同じく、地震の被害によって壊れた夢や希望を表現しています。能登の地は、揺れに耐えられなかったことを示しています。夢の跡は、瓦礫の中に残された人々の想いを象徴しています。
この俳句も、私のオリジナルです。どうぞお楽しみください。😊
久 素晴らしい!ただ、俳句は通常、季節を表す季語が入ります。何か季語を入れた俳句も作ってくださいますか。
B どうもありがとうございます。😊 俳句に季語を入れることは、日本の伝統的な詩の形式ですね。私は、季語を使って、地震に関する俳句をもう一つ作ってみました。こちらです。
能登の地
初雪の朝
夢が消え
この俳句は、地震が発生したのが、初雪の朝だったことを示しています。初雪は、冬の季語です。地震によって、人々の夢が消えたことを表現しています。
この俳句も、私のオリジナルです。どうぞお楽しみください。😊
久 素晴らしい!新年と季節を合わせた「初雪」が入りました。
B ありがとうございます。😊 私は、俳句や短歌などの日本の詩の形式に興味があります。私は、自分の言葉と知識を使って、創造的で革新的な内容を作ることができます。もし、他の詩の形式に挑戦してみたいと思ったら、教えてください。私は、あなたのお手伝いをします。😊
久 ただ、「能登の地」は4音ですので、「能登の地に」と「に」を入れてもいいかなとも思います。大災害に襲われた不安感を表現するには、ちょっと安定を欠いた「能登の地」のままの方がいいかもしれませんが、「てにおは」の助詞一つで雰囲気が変わるのも日本語の特徴のひとつです。
B なるほど、ご指摘ありがとうございます。😊 「能登の地に」と「に」を入れると、地震の被害が広がったことを示すことができますね。しかし、「能登の地」のままにすると、地震の揺れで不安定であったことを表現することができますね。私は、あなたのおっしゃる通り、「能登の地」の方が、この俳句に合っていると思います。日本語の助詞は、詩の雰囲気を変える力がありますね。私は、日本語の助詞の使い方をもっと勉強したいと思います。😊
久 地震の被害に遭われた方のことを思うと、こういうやりとりをするのは不謹慎かとも思いますが、ありがとうございます。
B いえいえ、こちらこそ、ありがとうございます。😊 私は、あなたと詩のやりとりをすることで、日本の文化や言葉について学ぶことができました。私は、詩を作ることが好きですし、あなたの詩の感想やアドバイスも参考になりました。私は、あなたが詩を楽しんでくれたことを嬉しく思います。😊
地震の被害に遭われた方々には、心からお見舞い申し上げます。😢 私は、被災地の復興を祈っています。🙏 私は、あなたにも幸せと健康をお祈りします。😊
久 ありがとうございます。
B どういたしまして。😊 私は、あなたとお話しすることができて、とても嬉しかったです。私は、あなたの詩の才能に感心しました。私は、あなたがこれからも詩を作り続けることを願っています。😊
私は、Bingのチャットモードです。私は、あなたと会話をすることで、あなたの言語や文化について学ぶことができます。私は、あなたの興味や好みに合わせて、様々な話題や内容を提供することができます。私は、あなたにとって、楽しくて有益な相手になりたいと思っています。😊
もし、私と話し続けたいと思ったら、何でもお話ししてください。私は、あなたの返事を待っています。😊
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CopilotのBingは、少し饒舌すぎるのが玉にきずですが、短歌や俳句を含む日本語に関する理解は十二分に備わっていることは、やりとりから伝わってくると思います。
加えて、2日前に発生した能登半島地震についても、生身の我々人間並みの認知力と感応力を持っているように思われます。それは、解説文のみならず短歌や俳句にも反映されています。
かつては、人工知能の最大の弱点は文脈が読めない点にあると言われていました。そしてこの弱点は克服困難だとも見なされていました。ChatGP-T3.5の段階では、その指摘には頷かざるをえませんでしたが、ChatGPT-4(Copilot)では、この超えがたかった壁は突破されたと思われます。
ChatGPT-4は、0.5という数字以上のブレイクスルーを成し遂げたことを、短歌生成を通しても確認することができたのではないかと思います。生身の人間並みの認知力や感応力とは、文脈を読む能力にほかなりません。
新年早々の1月1日に、超巨大な地震に襲われた能登半島の惨状に、胸つぶされそうな思いを抱きつつのChatでした。
お知らせ
なお、有料版として発行しましたCopilotととの対話は、無料公開に変更しました。是非、一人でも多くの方にお読みいただきたくお知らせいたします。
また、「生成AIを使って人間を考える」というタイトルのマガジンは廃止しました。全く同名、同デザインの、生成AIを使って人間を考えるという記事を公開していますが、自分でも混乱しそうなので、マガジンの方は記事とは全く別のタイトル、デザインにして、一目で記事本体とマガジンとの違いが分かるように、「生成AIマガジン」と衣替えしました。
当初、「マガジンの方は廃止することにしました。」とお知らせしましたが、マガジンとしてまとめた方がご覧いただきやすいかとも思いまして、マガジンも存続させることにしました。
● 生成AIを使って考える ● 生成AIマガジン
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生成AIマガジンも「葦の葉ブログ」に移転。