マイナカードと戸籍謄本

マイナカードと戸籍謄本

マイナカードの障害多発で、日本中が大きな衝撃を受けていますが、なぜこれほどの障害が多発しているのか。急ぎすぎだとの指摘はもっともだと思いますが、原因はそれだけではありません。政府はもとより、専門家も気がついていない、障害多発のもっと根本的な原因を探ってみました。

1.マイナカード導入は世界で3国のみ

目下、マイナカードをめぐる事故続出で日本中に衝撃が拡がっていますが、この衝撃には2種類あり、二つが重なって大衝撃として我々日本人を打ちのめしています。

一つ目は、究極の個人情報が、全く無防備に外部に晒されていることへの大衝撃。二つ目は、日本では、こんな杜撰すぎるシステムしか作れないのかという、IT技術の後進国ぶりを繰り返し見せつけられたことへの大衝撃です。

しかし岸田総理は、日本国民を打ちのめすほどのこの大障害について、その深刻さをほとんど理解していないように見えます。政権トップのこの認識の薄さも、大衝撃の衝撃度をさらに高めています。

他国でも同様の事例があるのかといえば、意外なことに、全国民に付番するマイナンバーカードのような仕組みを導入している国は少なく、独裁国家を除けば、アメリカと韓国とスウェーデンの3カ国だけだという。

世界でも問題続出の個人情報一元化 管理能力なし、責任は現場へ マイナンバー保険証導入で7000件の別人情報紐付け 2023年5月26日 長州新聞

スウェーデンは「1680年代から長きにわたる住民管理制度の歴史」があるとのことですので、日本にとって参考になるのはアメリカと韓国だろうと思います。

上記記事も米韓についてかなり詳しく紹介していますが、マイナンバーカードのような制度は、国民にとっては、メリットよりもデメリットの方がはるかに大きいように思われます。

米国、韓国とも、成りすましや情報流出による凄まじい犯罪が多発、頻発しています。両国ほどではないとはいえ、デジタル化以降のことだと思いますが、スウェーデンでも成りすまし犯罪が発生しているという。

また、アメリカでは、コロナ禍対応での給付金支援では、全国民に付番された社会保障番号(SSN)のおかげで、迅速に給付金が支給されたとのことが日本でも報道され、そうした制度のない日本の遅れが話題にもなりました。

しかしアメリカでは、SSNを使った迅速な給付金支給の陰で、同一人が2回も支給を受けるという二重取り犯罪も多発したという。アメリカ政府は業務を委託した民間業者に対して、損害賠償を求めて提訴したという報道もありました。

補助金を支給したことが記録されていれば起こりえない犯罪ですので、成りすましや情報流出などのような付番制度そのものに由来する問題というよりも、SSN管理の杜撰さに起因した、通常では考えられないような、超低レベルの管理上の問題のように思われます。

アメリカの軍事や宇宙や科学技術の研究分野やIT企業は、他の追随を許さぬほどの最先端に位置していますが、それ以外の行政や民生関連では、高度人材はかなり不足しているように思われます。

アメリカでは学校教育にも非常な格差があり、裾野広く高度人材を育てようという制度にはなっていません。不足する高度人材は手っ取り早く海外から呼び込もうという方針が貫かれていますので、国民の暮らしに直接関わるような分野にまでは高度人材を配置することができずにいることが、行政分野での、超低レベルの犯罪を誘発しているのだと思われます。

アメリカのこの補助金二重取りは、管理する能力のないまま付番制度を使うならば、無用な犯罪を招くだけだという教訓を提供してくれていますが、日本の場合は、制度運用前の段階で、他に例のないようなミスが続出しています。

2.アナログすぎるデータ処理

これも長州新聞の記事ですが、類似のどの記事よりも詳細な障害分析がなされていますので、以下にご紹介します。

トラブルや誤登録続出のマイナンバーカード 本人以外の口座紐付けが13万件 機能不全システムが国会通過する異常 2023年6月13日 長州新聞

マイナカードはかなり前から使われていますが、今回のような障害は以前にはありませんでした。報道でも指摘されているように、期限を切ったマイナポイント付与や保険証廃止策により、登録者が一気に増加したことに直接の原因がありそうですが、登録手続きのどこに問題があったのか、詳しいことは未だはっきりとはしていません。

河野デジタル大臣は、富士通Japanのシステムでトラブルが発生していることを公表しましたが、上記記事によると、富士通以外のシステムでもトラブルは発生しているという。

しかし、登録手続きやカード発行までの全体的な流れは不明のままですので、富士通のシステムだけが原因なのかどうかには疑問を感じますが、先日(6/21)の西日本新聞には、かなり詳しい関連記事が出ていました。

記事を参考に、カード発行までの流れをまとめると次のようになります。

各自治体の窓口でマイナカード交付申請書を受け付ける。⇒申請書を一括してカードを発行する「地方公共団体情報システム機構(J-LIS)」(総務省の外郭団体)に特定記録郵便で発送。⇒J-LISでカードの発行・管理

色々報道を見ていると、各自治体で入力していることになっていますが、マイナカードデータはJ-LISで管理しているようなので、西日本新聞の記事が事実を伝えていると思われます。

つまり、データ登録・カード発行は、J-LISの管轄下で行われるということです。コンビニ経由での証明書の発行の仕組みをみると、さらに理解しやすいと思います。この仕組みについても長州新聞以外には報道はありませんでしたので、障害が発生した経緯を検証した同紙記事から引用いたします。

 不具合があったのは、自治体ごとに構築されている「証明書発行サーバ」と呼ばれるシステムだ。「証明書発行サーバ」はそれぞれの自治体が発注しており、富士通Japanは約200の自治体から受注していた。このシステムは住民基本台帳を管理するシステムと接続している。コンビニで証明書の申請をすると、「地方公共団体情報システム機構(J-LIS)」が運営する証明書交付センターと公的個人認証サービスセンターにデータが送られ、個人情報が照合される仕組みになっている。その後に全国の自治体を結ぶ通信ネットワークを通じて各自治体に通知され、自治体が住民基本台帳を管理するシステムを使って本人情報を照会し、「証明書発行サーバ」がその情報を受けとり、証明書のPDFデータを作成する。この過程で不具合が起きて別人の証明書のPDFデータが作成され、コンビニのマルチコピー機に送信されたと見られている。

トラブルや誤登録続出のマイナンバーカード 本人以外の口座紐付けが13万件 機能不全システムが国会通過する異常 長州新聞)

上記記事からも、J-LISがデータを管理していることが分かりますが、J-LISだけで全ての処理が完結するのではなく、公的個人認証サービスセンターでの個人情報照合を経た上で、証明書発行サーバで最終処理が行われ、ユーザ(コンビニのコピー機)に届くという、かなり複雑な構造になっています。

今回の一気集中までは問題なく稼働していたわけですので、もしもこのシステムが国産ならば、日本のシステム構築力もなかなかのものではいなかと思います。

しかし今回は多数多様な障害が発生していますので、その原因を具体的に調べる必要がありますが、最大の問題は、各自治体の窓口業務がアナログそのものであったという点にあったと思います。

顔写真付きの手書きのカード発行申請書を自治体の窓口で受け付け、それを一括してJ-LISに郵送。カード情報の登録や作成はJ-LISの管轄下で行われていたとのことですが、全国から送られてくる膨大な数の、顔写真付きの手書きの申請書を使ってどのようにして作成していたのか、想像もできません。

一枚一枚手入力していたのか。とすると、正気の沙汰ではありません。ミスが頻発しても当然すぎるほどの状況です。

データそのものが別人に紐付けられていた障害については繰り返し報道され、よく知られていますが、郵送途中で申請書が紛失していた事例や、添付写真が別人になっていたケースもあったという。

仕組みを理解した上で、障害を具体的に見ていくと、システムの問題以前の、データ入力時の混乱やミスの可能性が非常に高い。ユーザーの入力ミスではなく、データ登録時のミスです。

大量のデータでも瞬間処理を可能にするのがデジタル技術の最大の特性ですが、日本では、デジタル技術を使ったデータ処理は原始時代のようにアナログチックです。

コロナ関連のデータ処理でも全て手入力していた状況だったわけですが、マイナカードでも全く同じ、変わっていません。

カードの交付申請時点で、申請書の文字データと顔写真とをセットにしてジタルデータ化して、その場で申請者にも確認してもらえれば、ほぼ間違いのないデータとしてデジタル化されます。

デジタル化されたデータは、郵送せずとも、J-LISや関係部署とも共有できますし、各システムにも直接送り込むことも可能です。それを可能にするような申請受付時点のシステムを作った後で、マイナカードの普及を進めるのがデジタル化の第一歩です。デジタル化の基本の基本で、技術的には即、実装可能なはずです。

突如襲来したコロナの場合は、デジタル化の遅れている日本ゆえ、アナログチックな対応になってもやむをえない面もありますが、マイナカードの場合は、コロナ禍での醜態を繰り返さないという反省の下、データ処理に混乱を来さないように万全の態勢を整えた上で進めるべきですし、その時間は十分にあります。

しかし岸田政権は、コロナ禍での失態への反省もないまま(失態の真の原因を理解しないまま)、マイナカードの普及を強引に推し進め、国民を不安に陥れています。おそらく、専門家も理解していないのだと思います。

また今回は、マイナカードには保険証機能も追加されたことも混乱に拍車をかけていますが、保険証機能の追加には、気が遠くなりそうほどの作業が必要であることを、これまた、長州新聞の記事で知ったばかりです。以下に、同紙記事から引用します。

保険証をマイナンバーと紐づける作業は、健康保険組合や協会けんぽ、共済組合など、「保険者」と呼ばれる団体が担っている。マイナンバーを保険証と紐づけるさい、加入者のマイナンバーを「地方公共団体情報システム機構(J-LIS)」に照会する。このさい、氏名、フリガナ、生年月日、性別、住所の5項目を入力すると、該当者のマイナンバーが確認できるようになっているという。兵庫県職員が加盟する共済組合県支部で発生した誤登録の場合、最初のデータ入力時に生年月日の入力を間違ったため、その条件に合う同姓同名の人物と紐づけてしまったという。住所が異なるのでエラー表示が出るが、申請された住所と住民票の住所が一致しない可能性を示すエラーは全体の1~2割に上っていたため、職員のなかに「不一致もあり得る」という先入観があったと報じられている。

トラブルや誤登録続出のマイナンバーカード 本人以外の口座紐付けが13万件 機能不全システムが国会通過する異常 長州新聞)

わたしは、この記事で初めて、マイナカードに保健証機能を追加する作業の中身を知ったのですが、これほど手間暇のかかる作業だったのかと驚いています。

被保険者やその扶養家族などの保険証データとマイナンバーとを紐付けるために、マイナンバーを管理しているJ-LISに問い合わせる際には、各自一人一人の「氏名、フリガナ、生年月日、性別、住所の5項目を入力」しなければならないとは!!!しかも、保険証データもデジタル化されていませんので、全て手入力!!!

保険証には氏名はあってもフリガナはないはず。にもかかわらずというべきか、デジタルゆえに必須的にフリガナも入力する必要があるらしい。しかもどれか一つでも間違うと、エラーが出るか、別人と紐付けられる可能性があるわけです。

例えば、わたしの氏名・久本福子は「ひさもとよしこ」と読みますが、フリガナなしには誰も読めません。「福子・よしこ」は神主であった叔父(父の兄)が命名したもので、込められた思いはありがたいものの、フリガナなしでは「ふくこ」以外には読めない名前です。「よしこ」は義訓ですね。

当然のことながら、「ひさもとふくこ」では全くの別人になります。と考えると、ミスなしで両者を紐付けよと要求すること自体、無理がありすぎ、不可能です。デジタル化を全く想定されていない元データと、入力時に必須とされている項目とが完全には整合されていないわけですから、ミスが出るのはある意味必然です。

つい最近、戸籍謄本にも氏名に読み仮名をつけることが決まったようですが、紐付けするならするとしても、そうした作業がスムーズに運ぶような環境を整えることが先決ですよ。そもそも、マイナカードの氏名にもフリガナはありません。

にもかかわらず、岸田総理は、いとも簡単に、秋までに総点検するようにとの指示を出していますが、全く意味のない総点検です。加えて、総理はこの作業にどれほど膨大な時間と労力を要するものなのか、想像したこともないのかと怒りを覚えますね。

保険証だけのデジタル化ならこんな混乱は発生していなかったはず。保険証だけのデジタル化だけでも治療や投薬などの医療データは一元化され、医療データの共有や重複投薬防止は可能になるはずですし、高額医療費控除などの手続きも簡単になるはずです。

そもそも、マイナカードに統合されずとも、保険証を使った場合は毎年1回、被保険者に対して、治療や投薬に関する簡単なデータは一覧記録で送られてきます。デジタル化されるとその情報は、より詳しい医療データとして記録され、活用域も広がるものと思われます。

ところで、マイナカードを保険証としても使うという方針は安倍政権時代に発表されたものですが、岸田総理は、紙の保険証を来年秋には廃止する方針まで示して、かなり強引に推し進めようとしています。

政府は保険証を人質にマイナカードの普及を図ろうとしているわけですが、我々国民の立場からすると、保険証をマイナカードに統合することで得られる利益は何なのかは不明。医療データの一元化が必要であれば、保険証のデジタル化で十分ではありませんか。

しかもマイナカードには、保険証機能のみならず、図書館データなども追加される可能性もあるという。のみならず、今後、マイナカードにどんな情報を追加するかは、いちいち国会に諮らずとも、内閣の判断だけで決めることが可能になる法律まで作られたという。

韓国では中国同様、クレジットカードの履歴まで付番された国民の情報として記録されているそうですので、国民が何を買ったのかは、政府はその気になれば把握することも可能になります。

日本のマイナカードには、クレジットカードまでは紐付けされていないとはいえ、図書館データまで紐付けされるならば、図書館利用は避けますね。病歴、治療歴、投薬歴なども、政府や第三者に把握されるのは不気味です。

岸田政権の進めるマイナカードは、アメリカのSSN以上の個人情報を盛り込んだもので、全国民に監視の目を張り巡らしている、中国の監視体制に近いものを目指しているのではないかとさえ思えてきます。

そうでないのであれば、マイナンバーと紐付けるためにJ-LISにアクセスして、保険証の「氏名、フリガナ、生年月日、性別、住所の5項目を入力」して確認するという、膨大な時間と労力を費やす必要のある作業は即刻中止し、マイナカードへの保険証の統合計画は廃止すべきです。

政府は、保険組合などに対し、この作業に要する人件費を支払ったのですか。重要な個人情報ゆえに、誰彼にも頼めないとはいえ、保険組合の職員だけでは対応不可能であることは明らかです。

政府はおそらく、保険組合などには経費は払っていないはずですが、総務省やデジタル庁管轄下で要した、マイナカードに関する費用はすでに巨額に達しているはずです。

巨額の税金を使って付番制度を作らずとも、デジタル化は可能です。

付番制度のないフランスですが、企業は、社員に支給する給与のデータを直、税務署に送付しているという。

通常は社員への給与データは、別途税務署への提出用として作成しますが、その手間が省けますし、税務署も各自の収入をリアルタイムで把握できますので、日本のような年末調整という、手間暇のかかる作業もおそらくフランスでは発生していないはず。しかも公明正大、収入をごまかすことも、ほぼ不可能です。もっとも、勤め人は、日本でも収入をごまかすことは不可能ですが。

また、日本でも、税務署はほぼ全国民の収入は把握しているはずですので、補助金の支給などが必要な事態が発生した場合は、税務署のデータを使えば所得に応じた支給など、細かい仕分けも可能になりますし、アメリカのような二重取りは絶対に発生しないはず。

無駄な税金を使わずに、すでにある税務署などのシステムを使い、効率よくデジタル化を進めるべきだと思います。そして政府機関に登録する国民のデータは、最小必要限度にとどめるべきだと思います。

マイナカードをめぐる障害多発で、これまで余り深刻には考えてこなかったマイナカードについて初めて、あれこれ考えることになりましたし、便利!という御旗の陰でどのような事態が発生しているのか、あらためて考えるきっかけにもなりました。

デジタル庁は、目下のところ政府の方針でマイナカード普及に注力せざるを得ない状況だと思いますが、本来の任務は、デジタル化によって国民の暮らしを安全便利にするとともに、経費節減を実現すべくデジタル化の利活用を推し進めることにあるはずです。そのためにはまず、政府が事態を正しく理解し、姿勢を改める必要があるはずです。

また、今回初めて地方公共団体情報システム機構(J-LIS)の存在を知りましたが、この組織はデジタル庁よりもかなり前に創設され、管理運営の実績もあるわけですが、国のデジタル化は地方自治体との共同作業なしには不可能ですので、このJ-LISを核にデジタル庁を発足させてもよかったのではないかとも思います。

少なくとも、両者はもっと密接に連携した組織運営すべきではないかと思います。デジタル庁は、J-LISの活動実態についてはほとんど知らなかったのではないか。つまりは、障害の実態については、ほとんど把握していなかったのではないか。一連の騒動は、そんな印象も与えます。 

なお、デジタル庁のサイトは、デジタル庁のサイトやばすぎるwww ほどに素晴らしいとのこと。「やばすぎる」とは、超褒め言葉。最新のプログラミン言語で構築されており、簡素なデザインの中に無駄なく必要な要素が組み込まれていて、非常に見やすく使いやすいサイトになっているという。デザインシステムも公開されており、サイトの全てを国民と共有したいとの思いがオープンに示されているという。ちなみにサーバも国内にあります。

国民思いのサイトの思想が、運営上でも実現されることを願っています。

3.戸籍謄本の改変

デジタル化は便利で効率化アップ。どんどん推進すべきですが、デジタル化が何をもたらすのか。日本の政治家は、デジタル化、デジタル化とお題目は唱えるものの、デジタル化が何をもたらすのか、その実態についてはほとんど知りません。また、知ろうともしていませんが、まずは、その実態についても学んでいただきたい。

実は、国が管理する個人情報、具体的には究極の個人情報である戸籍謄本のデジタル化で、わたしは異様な経験をしています。

三多の死後のことですが、子どもの籍謄本を取り寄せたところ、戸籍が以下の画像のように、異様な形に変形、変質させられていることを知って、ぶっ倒れそうな衝撃を受けました。

異様に改変された戸籍謄本

デジタル化された戸籍謄本は、青焼きされたような青色に覆われています。全体が青色になっていますが、上記画像では、青い本文記載ページ(便宜上「戸籍謄本主情報」と呼びます。)と周りの余白部分が分かるように、余白部分の色を薄めています。

子どもたちは三多の戸籍に入っていますので、父親であり、戸籍筆頭者である三多の名前と子どもたち(長男、長女、次男の3人)の名前は、青い本文記載部分に記載されています。

ところが信じられませんが、母親であるわたしの名前は、欄外に小さな名前で書かれていました。しかも、欄外のスペースが狭いからか、斜めに配置されています。

こんな謄本は他に例があるのかどうか知りませんが、おそらく他に例はないはずです。デジタル化後は、こんな異様な書き方が標準になっていたならば、問題にならないはずはありません。

わたしだけではないにせよ、事例は少ないはず。こんな異様な戸籍謄本を見せられると、わたしは三多とは正式に結婚せずに3人の子どもを産んだのではないか。そんな印象を与えずにはいないはず。

余りの異常さに、わたしはすぐさま法務省に怒りの電話をかけました。デジタル化後は、余りにも異常な戸籍謄本が作られているが、戸籍謄本のデジタル化に際しては、国は書式の見本や基準を示したのかどうか尋ねたところ、特に書式の見本や基準は作っておらず、作成する自治体に任せているとのことでした。

戸籍謄本という最重要な個人情報をデジタル化するに際して、国として、書式の見本や基準も作らないとは、国として余りにも無責任ではないか。非常にひどい、むちゃくちゃな戸籍謄本が作られていると、厳しく抗議しました。

それから10数年は経ちますが、最近取り寄せた戸籍謄本には、わたしの名前を小さな文字で欄外、斜め置きというような異常な表記ではなく、父母として三多とわたしの名前が並んで記載されています。

ネットを見ると、どうやら戸籍謄本の書式などは統一されているらしく、最近取り寄せた戸籍謄本も見本と同じ書式になっています。当初の書式は余りにも異常だったので、作り変えたらしい。紙の色も青焼き風ではなく、薄いグレイに変わっていますが、何というムダな税金の使い方でしょうか。

そもそも、戸籍謄本のデジタル化は唐突に始まったとの印象です。コンビニでも取得できるようにとの触れ込みでしたが、デジタル技術は、30年近く前の当時の日本では、国レベルではもとより、企業でもほとんど話題にもなっていない頃のことでした。

未完で、全貌はまだ語り終わっていませんが、事実は小説より奇なりにてその一端をご報告しておりますように、わたしは、三多の死の前後の頃から異様な出来事に襲われ続けておりました。

捏造話が余りにも堂々とまかり通る状況が続く中で、わたしの存在そのものが消されるのではないか、さらには、戸籍にすら工作が及ぶのではないかとさえ危惧せざるを得ない日々を送っていました。

そんな中で、戸籍謄本がデジタル化され、コンビニでも簡単に取得できるようになとのニュースは、厳重管理されていた戸籍の保管庫の扉が開かれ、誰でも自由に出入り可能なものに変えられたのかと、わたしの危惧が現実のものになるとの恐怖を誘うものでした。

ただ、わたしが戸籍謄本のデジタル化のニュースを知ったのは、三多の死から数年後のことで、この戸籍の大改変が実行に移され、運営が始まったのは自民党政権時代のことでしたので、この異様な戸籍改変は、てっきり自民党政権時代のことだとずっと思い込んでいました。そして、コンビニでも戸籍謄本が簡単に取れるよと宣伝していた、自民党政権の九州出身の某法務大臣には、強い怒りを覚えていました。

戸籍謄本の取得は、人の長い一生の中でも数回ぐらいしかありません。にもかかわらず、なぜわざわざコンビニで取得できるようにする必要があるのか。危険ではないか。

戸籍謄本よりははるかに取得機会の多い住民票ではなく、なぜ戸籍謄本をコンビニで取れるようにする必要があるのか。余りにも異常ですが、異常だと感じているのはわたしぐらいで、その異常さは国会でもマスコミでも全く問題になっていません。

その後は住民票もコンビニで取れるようになりましたが、戸籍謄本が真っ先にデジタル化の対象になったことには、重大な意味があったと思います。その意味について考えるに際して、戸籍謄本のデジタル化がいつ決まったのか。確認したいと思います。

戸籍謄本のデジタル化は、わたしは、ずっと自民党政権時に始まったとばかり思い込んでいましたが、今回初めて調べたところ、なんと、初めて野党が政権を握った平成5年の翌年の、平成6年(1994年)だったことが分かりました。以下のサイトにて知ったばかりです。

戸籍謄本取り寄せセンター

左の戸籍のサンプルでは、戸籍事項の「戸籍改製」欄に

【改製日】平成10年10月10日

【改製事由】平成6年法務省令

       第51号附則第2条第1項による改製

と書かれています。

これは、平成6年に戸籍の電子化が法令で決められ、

それに基づいて平成10年10月10日に

戸籍の電子化が行われたということを表しています。

戸籍のデジタル化は平成6年10月に法務省の省令で決められたという。奇しくも三多の亡くなった年ですが、省令については以下の解説が非常に分かりやすい。

法令、法律、政令、省令、府令、府省令、命令の違いは? 株式総務

つまり、省令とは、国会の関与なしに(国会の審議も承認もなしに)法務省(法務大臣)の判断だけで、勝手に作って実施できる法的決まりだという。道理でいつ、どんな論議を経て決まったのか、全く記憶にないのも当然でした。

省令とは、法的拘束力としては、最下位に近いほどに緩いものだとはいえ、法務省内だけで決められた後、全国に通知され、全国民の戸籍が改変されたわけですから、恐ろしい

ちなみに、平成6(1994年)年10月とは、前年平成5年に初の野党内閣として誕生した細川内閣が、細川総理の突然の辞任で総辞職、その混乱状態中で発足したものの、たった2ヶ月という超短命に終わった羽田内閣の後、自民党、社会党、新党さきがけの連立政権下で誕生した村山内閣(平成6年6月30日~平成8年1月11日)時代に当たります。

時の法務大臣は自民党の前田勲男氏。平成6年6月30日~7年8月8日までの1年余り法相を務めていましたので、おそらく前田法相下で戸籍謄本デジタル化の省令が出されたものと思われます。

電子政府(e-Gov)の萌芽のような組織が作られたのが2000年(平成12年)頃ですので、平成6年時点では、電子政府の影も形もありません。にもかかわらず、戸籍謄本だけをデジタル化して、コンビニでも取れるようにするとは、特異な意図がなければまず思いつくはずもありません。

従来の紙の戸籍謄本では、過去の記載は全て残っています。結婚や離婚や死亡などの入籍、除籍履歴も、日付入りで残ります。戸籍から勝手に名前を消すことも追加することもできません。つまりは、紙のままでは、戸籍を痕跡を残さずに改変、改竄することはまず不可能だったわけです。

そもそも紙戸籍では、戸籍のデータそのものに外部者がアクセスすることは100%不可能でした。しかしデジタル化では、それらのデータが一気に外部に出されました。今でも不足していますが、当時は、日本国内だけでは戸籍のデジタル化作業は不可能であったことは明らかです。

特に日本では政治家も官僚もデジタル無知。今もそうですが、30年近く前の当時では、政治家も官僚も全員、デジタルの「デ」も知らなかったのは言うまでもありません。おまけに、政治は混乱の極みにありました。

戸籍がどんな扱いをされようが、ほとんど誰も気にもとめません。戸籍を悪用しようと狙っている連中にとっては願ってもない環境ですので、統一書式も何もなく、好き勝手に戸籍謄本を、ぺらぺらの紙1枚のデジタル印刷に改変することができたのです。

ただ、デジタル化の実務は各自治体任せでしたので、実施時期も謄本書式の質的な違いにもかなり差はあったようですが、村山内閣時代に戸籍のデジタル化の省令が出され、デジタル化に向けた動きが始まりました。法務大臣を除けば、村山総理をはじめ、他の大臣や政治家の大半は知らなかっただろうとは思いますが。

なお村山内閣時代には阪神淡路大震災とオウム真理教事件という、大惨事が立て続けに発生しましたが、これら大惨事に襲われる中、人知れずこっそりと、戸籍の大改変が行われたことも記憶しておきたい。

そしてデジタル教育の普及を通して、自国内で対応可能な体制を整えることなく、闇雲にデジタル化を進めることはどれほど危険であるか、政治家の皆さんは、とくと考えていただきたい。

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